デンマークは、代替エネルギーの一つである風力発電のパイオニア。環境・エネルギー分野の開発と実用化では、世界の先端を行く国といわれていますが、さまざまな取り組みの中から、今日は私たちの日常生活に直結する家庭ごみに関する新たな試みについてご紹介します。
3月半ば、市から我が家に「私たちのごみ」という小冊子が届きました。ここには、2020年12月に出されたごみ省令にもとづき、今後全国すべての自治体の全世帯で、家庭から出る一般ごみを10種類に分別することが義務付けられると記載されています。この省令が効力を発するのは来年からですが、すでに多くの自治体では、この分別システムとそれに伴う新たな収集システムを開始しており、私が住んでいるゲントフテ市も例外ではありません。
ゲントフテ市から届いたごみ分別に関する小冊子の表紙
市民誰もがこの分類システムを理解できるように、全国統一のピクトグラムが使用されることになりました。
上段左から:@その他のごみ A生ごみ B古紙 Cガラス Dプラスチック
下段左から:E金属 F段ボール G古着 H危険なごみ ➉食品や飲料水用カートン
このパンフレットが届いた直後、各世帯には、キッチン用の生ごみ専用容器とその他のごみ専用容器が市から届き、さらに一戸建て世帯には、これまで燃えるごみ用として使われてきた従来型コンテナに代わり、生ごみとその他のごみが混ざらないようにデザインされたコンテナが設置されました。すでに7年ほど前からB+C専用分別コンテナ、D+E専用分別コンテナと燃えるごみ用コンテナが使用されていましたが、3つ目のコンテナが改造されたわけです。
我が家では、キッチンの洗い場下の引き出しに生ごみ容器(緑色プラスチック袋を中にはめて使用)とその他のごみ容器(黒色プラスチック袋使用)を配置しました。どちらの容器も柄がついたコンパクトなデザインで、容器の取り出しやごみ出しがしやすく、しかも蓋つきなので衛生的でもあり、使い勝手は上々です。
生ごみと他の燃えるごみを分別することにしたのは、いうまでもなく、生ごみを燃やさずにリサイクルし、国家戦略でもある一般ごみのリサイクル率を高めることが目的です。リサイクルに回る家庭ごみは、2011年に37%でしたが、2019年には50%まで上昇しました。そして今後、この率がさらに伸びることが期待されています。
小冊子に示された生ごみのリサイクル循環図
上の図からもわかるように、分別収集された生ごみは、複数の自治体で共有する工場(5)に運ばれて、プラスチック袋や異物が除去されるとパルプ状に加工され、その後、バイオガス処理場(6)へと搬送されます。ここで生産されたバイオガスは、その一部が天然ガスになり燃料として再利用され、また一部は光熱として家庭に戻され、残留物は天然肥料として再利用されるという仕組みです。
10の分類中6つは、各家庭の庭先に置かれたコンテナや集合住宅の共同ごみ置き場にある大型コンテナに、市民自らの手で常時分別していますが、そのうちの[古紙+ガラス]と[プラスチック+金属]ごみは、私たちの市では、4週間に一度、[生ごみ+その他のごみ]は週一回収集されます。またそれ以外のごみ(段ボール・衣類・危険なごみ・家具や電気製品など)は、現在はある程度まとめて、各家庭で市の分別センターまで運ぶか、隔週やってくる特別トラックに収集してらうことも可能です。
それからもう一つ、庭のある一戸建て世帯には、庭ごみ(刈った芝や枝葉など)専用の緑色のコンテナも備えられており、これは隔週収集され、堆肥にリサイクルされています。春から秋の季節は、庭ごみの量がかなり増えるので、コンテナを2台備えている家庭も多いようです。これら分別コンテナの容量は、1台およそ240リットルで、これが一杯になるとかなりの重量になります。そのため、収集作業にあたるスタッフが健康障害を起こさないように、すべてのコンテナはキャスター付きで、収集車に一旦コンテナを固定し、それを反転させて中のごみを車両へと移すようにデザインされています。
庭ごみ収集にあたる市のごみ収集車
ごみ収集日の前夜には、該当するコンテナを家の前の歩道に出しておくことになっていますが、種類により収集日が違うので、これをきっちり把握しておくことは容易ではありません。とはいうものの、自治体のホームページには「ごみ収集」に関する情報がわかりやすく掲載されており、各世帯の住所をインプットすると、その地区の収集日が明記された年間カレンダーがアップされるので、これをプリントアウトしておけば、間違えずにすみます。
我が家では、ごみに関する一切の作業は、長年、暗黙の了解で夫の仕事になっていますが、どうも同じような役割分担の家庭がかなり多いように見受けられます。日本でもごみ出しは、出勤前のお父さんの仕事という家庭が多いと聞いたことがありますが、いかがでしょうか? ちなみに今日ご紹介した家庭から出るごみの収集・容器提供は基本的に無償です。ただこれら公共サービスの費用は、すべて私たちの税金で賄われているので、完全にタダというわけではありませんが。